もしもマニュアル 緊急

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4章
緊急
176ページ
衛生
198ページ
生活
206ページ
連絡
226ページ

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もしもマニュアル
もしものとき、水・ガス・電気はすべてストップ。日常生活で必要な物は、ほとんど手に入りません。
3日からいっ週間は、限られた物資で生活しなければなりません。本章では、災害発生時に役立つ、さまざまな「知恵」や「工夫」を集め、図説で分かりやすく解説します。章末に掲載した実践的なワークショップにも挑戦してみましょう。

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しんぱい蘇生法

  1. 倒れている人の意識を確認
    災害時は、救急隊の到着が遅れることが予想されます。倒れている人を見たら、肩を軽くたたき「わかりますか!」と呼びかけます。返事があるか、手足が動くか、ケガの痛みへの反応、意識の有無を確認します。
  2. まわりの人に協力を求める
    反応がなかった場合は、大声で「誰か来てください。人が倒れています。」と近くの人に協力を依頼します。また、安全な状況であれば、協力者にエーイーディー(自動体外式除細動器)の搬送をお願いし、応急手当を行いましょう。
  3. 呼吸を確認する
    倒れている人の胸とお腹の動きをしっかり見て、呼吸の乱れがないか、10秒以内で確認します。胸とお腹の動きがなければ、「普段どおりの呼吸なし」と判断して、胸骨圧迫を行います。
    177ページ
  4. 胸骨を圧迫する
    胸の中央に両手を重ね、成人の場合には、胸が少なくとも5センチメートル沈む程度の強さで圧迫します。1分間に100回のテンポで行います。胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせる場合は、胸骨圧迫30回と人工呼吸2回のサイクルを組み合わせます。
  5. 人工呼吸をする
    あごを上げて気道を確保し、ひたいに当てた手の親指と、ひとさし指で鼻をつまみます。人工呼吸用マウスピース(※注1)を使用して、空気が漏れないよう口をおおい、1秒ほど息を吹き込みます。そのとき、胸が持ち上がるのを確認します。
  6. エーイーディーを使う
    エーイーディーの電源ボタンを押します。電極パッドを胸に貼り、電気ショックの必要がある場合は、音声メッセージが流れるので、傷病者から離れ、ボタンを押します。メッセージに従って、すぐに胸骨圧迫を再開します。

注意、1
人工呼吸用マウスピースなどを使用しなくても感染危険は、極めて低いと言われていますが、感染防止の観点から、使用したほうがより安全です。

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止血
動脈性出血
噴き出すような出血

静脈性出血
湧き出るような出血

毛細血管性出血
にじみ出るような出血

大量出血は生命の危険も
人間の全血液量は体重の7から8%で、体内の3ぶんの1の血液が失われると生命の危険があります。真っ赤な血が噴出するような動脈性出血は、すぐに止血が必要です。毛細血管からの出血は、ほとんどの場合自然に止まります。
詳細263ページ

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直接圧迫法による止血
出血している部分にガーゼや清潔な布などを直接当て、手や包帯で強く圧迫します。布の大きさは、傷口を完全におおう大きさが必要です。感染予防のため、ゴム手袋やビニール袋などを必ず着用し、血液が付着しないように心がけてください。
間接圧迫法による止血
直接圧迫法での止血が難しい場合は、間接圧迫法を試みます。心臓に近い動脈を親指などで骨に向かって押さえ付け、血の流れを一時的に止めます。ひじから先の出血はじょうわんの内側中央で、いずれも親指で強く押します。脚からの出血は、出血がわの脚を伸ばし、だいたいこつの付け根をこぶしで強く押します。

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骨折、捻挫の応急手当

そえ木で固定する
骨が折れて痛みがある所をむやみに動かすのは禁物です。折れた骨を支えるそえ木になる物を用意し、折れた骨の両側の関節とそえ木を布などで結び、固定します。

三角巾を使う
三角巾は、身体のどこでも使え、スカーフや風呂敷、大判ハンカチでも代用可能。傷口の汚れは、水で流し、滅菌ガーゼなどを当てて使います。結び目が傷口の真上にこないようにします。

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切り傷の応急手当

材料
布、包帯、水、滅菌ガーゼ

  1. 傷口をしっかりおおえる大きさの布や包帯を用意します。
  2. 傷口が土砂などで汚れている場合は、水できれいに洗い流します。
  3. 出血している場合は、滅菌ガーゼなどを当てて傷口を保護します。
  4. 包帯を巻きます。

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やけどの応急手当

軽いやけどは、水で冷やす
面積が身体の10%未満(傷病者の片手の手のひらの面積が、体表面積の1%)のやけどなら、できるだけ早く、痛みがなくなるまで15分以上きれいな水で冷やします。
詳細262ページ

手当のポイント
断水時は、水道を使うことができないので、ペットボトルの水などを使って処置します。水道が使える場合は、傷口を流水で15から20分ほど流し続けます。また、手当をする際の注意点を確認しましょう。

  • 衣類を着ている場合は、衣類を着たままで冷やす。
  • 広い範囲のやけどの場合は、体が冷えすぎないように注意する。
  • 水ぶくれを破らないように注意する。
  • 医薬品を使わない。

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傷病者の負担を軽減する

衣類を緩める
傷病者に楽な姿勢をとらせ、「痛くないですか」などと声をかけ、本人の希望を聞きながら、衣服やベルトなどを静かに緩めます。

体温を保つ
悪寒を感じていたり、体温低下や顔面そうはく、冷や汗をかいている場合は、衣服や毛布などをかけて体温低下を防ぎます。
参照194ページ
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傷病者の体位管理

仰向けに寝かせるのが基本
平らな所に仰向けに寝かせるのが基本。最も安定して、リラックスできる姿勢です。

吐いたり、背中にケガをしているとき
顔を横向きにして、うつぶせ。吐いた物がのどに詰まらないように注意します。

頭にケガをして呼吸が苦しそうなとき
仰向けに寝かせ、クッションなどで上半身を少し起こしておきます。

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腹痛や腹部にケガをしているとき
クッションなどで上体を起こし、ひざの下にもクッションを当ててひざを立てます。

呼吸や胸が苦しそうなとき
脚を伸ばして座らせ、脚と胸の間にクッションなどを挟み、上半身をあずけます。

呼吸はしているが意識がないとき
気道を確保するために、横向きにして上の脚のひざを90度曲げて寝かせます。

熱中症・貧血・出血性ショックの場合
仰向けに寝かせ、脚元にクッションを置き、脚を15から30センチ高くしておきます。

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傷病者の搬送法

背負う
傷病者を背負い、ひざの下から腕を入れて両ひざを抱え込み、両手をしっかり持って運びます。ただし、意識障害、骨折、内臓損傷のある傷病者には不適当です。

担架などを使う
担架にのせる場合には、傷病者の足側を前にし、動揺や振動を与えないようにして運びます。傷病者の状態を悪化させないように運ぶための重要な方法です。担架がない場合は、丈夫な板などで代用することも可能です。

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包帯の代用
材料 ガーゼ、ストッキング

  1. ストッキングを包帯の代わりに使います。まずは、傷をガーゼなどで押さえます。その上から、ストッキングの胴の部分をかぶせます。
  2. ストッキングの、りょうあしの部分を頭にぐるぐる巻き付けます。最後に端を縛って固定します。洗って清潔を保てば、繰り返し使用できます。

包帯代わりになるそのほかのアイテム
バンダナ
ハンカチ
手拭い
ネクタイ
タオル
カーテン
下着類
紙おむつ
生理用ナプキン
ラップ

いずれも清潔な物に限る。

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消火器の使い方

  1. 震災時は、初期消火が重要になります。消火器を使う際は、まずは火元を確認。逃げ口を背にします。
  2. 消火器の上部についている安全ピンを抜きます。
  3. ノズルを手に持って、放射口を燃えている部分に向けます。
  4. バーを握って火元に直接消火剤を放射します。炎が天井に達したら、消火をやめて避難します。

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屋内消火栓の使い方

注意 一号消火栓は、複数人での操作が基本。ここでは、二人で操作することを想定。

  1. 起動ボタンを押して、セキショク表示灯が点滅すると、ポンプが起動します。
  2. 消火栓の扉を開き、ホースを延長します。
  3. もうひとりが開閉バルブを開きます。
  4. 火元に向けて放水します。

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スタンドパイプの使い方

注意 道路上の消火栓や排水栓を使う消火器具。使用には、事前訓練が必要です。

  1. 消防車がはいれない狭い路地などで有効です。まず、消火栓かぎを差し込み、腰を低くしてふたをあけます。
  2. パイプを放口に結合。スピンドルドライバーを回してしゅっすい確認後、パイプに結合したホースを延長します。
  3. ホースにノズルを結合。「カチッ」と音がするまでしっかりと差し込みます。
  4. ホースをまっすぐに伸ばし、合図をして放水します。ノズルは、目標に向け、腰の位置でしっかりと保持します。

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可搬式消防ポンプの使い方

注意 複数人での操作が基本。使用には、事前訓練が必要です。

  1. 人力でも十分搬送できる大きさの消防用ポンプ。まずは、ドレンコックと、ほうこうバルブを閉め、吸水かんをポンプ吸水口に取り付けます。
  2. 吸水かんを防火水槽やプールなどに投入します。
  3. ポンプを起動し、吐き出し口にホースを接続して火元まで延長します。
  4. 火元に向けて放水します。

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新聞紙で暖をとる

上着を作る
上着が足りず寒いときに新聞紙が活用できます。新聞紙を数枚重ねて肩からはおり、粘着テープなどで合わせ目を止めます。

靴下と重ねて履く
足元が冷えるときは、靴下を履いた上に新聞紙を巻き、上からさらに靴下を履くことで暖がとれます。

ほかにも役立つアイテム
身につける物

  • フルーツネット
  • アルミホイル
  • ラップ
  • ハンカチ
  • 気泡緩衝材

床に敷く物

  • 段ボール
  • 発泡スチロール

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ポリ袋と組み合わせる
新聞紙をくしゃくしゃに丸め、大きなポリ袋に入れ、その中に足を入れます。ポリ袋の口を軽く閉じると、より暖かくなります。

腹巻きを作る
腹巻きをするのも、体を温めるのに有効です。用意する物は、2枚の新聞紙とラップ。新聞紙を二つ折りにしてお腹に巻き、その上からラップを巻き付けます。

色彩効果を利用して体温を調節する
人は、赤などの暖色を見ると体感温度が上がり、青などの寒色を見ると下がると言われています。状況に合わせて、衣服や避難所の仕切りの布などの色を工夫しましょう。

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体温を調節する
首の後ろやわきの下、びていこつの上の温度を調整することで体温の調節ができます。寒気対策や熱中症予防などに活用してください。

首の後ろ
首の後ろの血行をよくするツボにマフラーなどを巻くだけで、かなり体温を保持できます。暑いときは「冷やすのも有効です。

わきの下
体表面近くに太い動脈があるので、ここを温めたり、冷やすことで、身体全体に効果があります。

びていこつの上
びていこつの上の温度を調整することで、簡単に体温調節ができます。

湯たんぽを作る
材料 ペットボトル、水、湯、じょうご、バケツなどの容器、タオル
水道すいと沸騰させた湯を1たい1の割合で混ぜ、約60度のぬるま湯にします。丈夫なペットボトルにその湯を注ぎ、低温やけどを防ぐため、タオルを巻いて使います。

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首を温める・冷やす
寒いときは、首にマフラーやタオルを巻く。暑いときは、首の後ろに保冷剤を当て、タオルなどを巻きます。

わきの下を温める・冷やす
お湯を入れたペットボトルをわきの下に挟むと、体全体が温まる。暑いときは、保冷剤を挟むといいでしょう。

びていこつの上を温める
びていこつの上にカイロなどを貼ると、身体全体が温まります。カイロが入手できた場合は、まず、びていこつの上に貼るのがおすすめです。

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足を保護する

足や靴を水から守る
材料 ポリ袋、ひも
足場が悪い被災地では、足元を守ることが重要。靴がぬれないよう、靴の上からポリ袋をかぶせて、くるぶしあたりでひもを結びます。

足や靴をがれきから守る
材料 ポリ袋、板、ひも
上記と同様、靴にポリ袋をかぶせた上で、板などの硬い物を靴底の下に敷いて、緩まないようひもで縛ります。

なぜ足を守るのか?
非常時は、まずケガをしないことが重要です。被災地は、がれきなどが散乱し、水たまりができ、想像以上に足場が悪くなります。釘や鋭利な破片でケガをしないように、あらかじめ足を守るすべを知っておくと安心です。

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脱水症状を防ぐ
材料 水、砂糖、塩
砂糖 大さじ4はい
塩 こさじ、れいてん5杯
水 1 リットル
脱水症状を防ぐため、吸収率が水の約25倍の経口補すい液を作っておくといいでしょう。
材料は、水、砂糖、塩だけ。水1リットルに対して、砂糖大さじ4はい(約40グラム)、塩こさじ、れいてんご杯(約4グラム)を溶かします。

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